しんろ

本を読んだ感想を友だちと語り合う。そんな経験は、たいていの人が持っているだろう。でも、本そのものを友だちにするという感覚は、あまりなじみがないんじゃないかという気がする。

でも、本にだって立派に人格(のようなもの)はある。書き手の性格や経験は、もちろん本に投影されているし、小説だったら登場人物たちのキャラクターがさまざまにからみあって、その小説にしかない独特の世界観が生まれる。ひとりひとりの人に個性があるのとおんなじだ。

小説だけじゃない。歴史の本とか科学の本にも、ちゃんと個性がある。すごく気むずかしそうに見える本が、とてつもなく面白いことをささやいてくれたりすることだってよくあるのだ。

あけっぴろげで楽しくて、だれもが近づける友だちはたしかに素敵だ。けれど、ちょっと近寄りがたいだれかが、実はすごく面白くて、生きていく上でかけがえのない知恵をさずけてくれたり、支えになってくれたりする。なんてことがあったら、もっと素敵なんじゃないだろうか。

だから、「本は友だち」では、本からなにかを学ぶ、という生真面目な態度は、とりあえずわきに置いておくことにする。そして、いろいろな本と友だちになってしまうにはどうすればいいのかということについて、僕なりのささやかなやり方を述べることにしたい。気むずかしい本だって、つきあい方ひとつなのだ。

みんなも進学した先で、きっと近寄りがたい本とつきあわなければならなくなるだろう。そんな時に、少しでも役立つ方法をここで示すことができれば、と考えている。
友だちになれそうもないような本とうまく友だちになれれば、気むずかしい先生ともきっとうまく友だちになれるし、成績アップまちがいなし(というのは、言い過ぎかもしれないけどね)。

執筆者自己紹介:大岡玲(おおおか あきら)

1958年東京生まれ。私立武蔵高校卒業後、二浪の末に東京外国語大学イタリア語科に入学。以降、だらだらと大学院まで居すわってしまう。
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大学在学中から本格的に小説を書きはじめ、87年29歳の時に最初の小説を文芸誌に載せてもらう(あの時は、気絶するほどうれしかった!)。89年に『黄昏のストーム・シーディング』という作品で第二回三島由紀夫賞を、90年には『表層生活』で芥川賞を受賞した。
小説以外に、エッセイ、書評、翻訳なども手がける。お調子者なので、テレビ番組の司会やコメンテーター、ラジオ出演なども時々やっている。
2006年からは、東京経済大学で日本文学や日本語表現、物語論といった授業を担当中。
  • 2012.03.12UP

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